多摩で暮らす人 case01
東大和市で生まれたたくさんの出会い 人と人がつながるベーグル店
栗栖佳代さん(東大和市)

栗栖佳代さん
多摩湖や狭山丘陵などの豊かな自然に恵まれながらも、都心部から電車で40分圏内に位置する東京の住宅都市・東大和市。のどかで落ち着いたこの地に移住し、ベーグル&スコーン専門店「クリカ食堂」を営む栗栖佳代さんに、東大和市の魅力と、この町で巡り合ったたくさんの出合いやお店をオープンするまでの経緯、そして今後の夢を伺った。
プロフィール
- 〇栗栖佳代さん
- 長崎県出身。大学卒業後、都内の一般企業でコールセンターに6年間勤務。リアルに人と接する仕事がしたいという思いと、体調を崩して食事を見直したことがきっかけで飲食業へ。フードコーディネーターの資格を取得し、2015年に自宅での料理教室を始める。翌年には「クリカ食堂」として小平市・学園坂キッチンにてベーグルとスコーンの販売を開始し、2021年に東大和市に店舗をオープンした。
店舗情報
- 〇クリカ食堂
- 2021年9月16日にオープン。毎週水曜日と木曜日(祝日を除く)のみの営業ということもあり、営業日は開店前から長蛇の列ができるほどの人気ぶり。「シンプルな美味しさ」「時間が作る美味しさ」「日々のごはん」をコンセプトに、シンプルな材料を使用した発酵にこだわったベーグルとスコーンを販売する。飽きのこない味わいや食感、季節ならではの限定フレーバーが大人気。

大学時代は初等教育学科に所属。その頃から人とのコミュニケーションやものづくりが好きだったそう。
—多摩地域への移住のきっかけを教えて下さい。
夫の社宅が国立市にあったんですよ。それで初めて多摩地域にきました。はじめは、多摩地域ってどこ…?って思いました。でも住んでみたらすごく住み心地が良かったんです。最初は国立市に住んでいたんですけど、妊娠をきっかけに将来のことも考えて新居に移ることにしたんです。色々悩んだ結果、予算的にも物件的にも満足したのが東大和市の家でそこに決めました。物件を探していた当時の私は東大和市を知らなくて、でも初めて東大和市にある駅を降りたときに、駅前のロータリーが広くて、緑が広がっていて、空がすごく青くて、なんだか良い場所かもと思えたんです。住んでみると、背伸びをしないでいられる町の雰囲気がとても気に入りました。
—東大和市での暮らしはいかがですか?
日常生活に不自由はないですね。市内にはスーパーも多く、普段の買い物は市内で充分済みます。大通りには「ヤオコー」と「イトーヨーカドー」が2軒並んで建っていて、そこには市外からのお客さんも多いみたいです。2店舗がライバルとして価格とか品質とかを競いながら切磋琢磨してる感じが本当におもしろくて大好きなんですよ。市内にはほかにもスーパーが点在しています。
—それは日常のお買い物が楽しそうですね。
多摩で採れる野菜がとにかく美味しくて、それに安いんです。お手ごろな価格で朝採れの新鮮な野菜がたくさん手に入りますし、大きいスーパーでも地元野菜のコーナーがあったり、直売場もあったり、立川の「ららぽーと」には多摩野菜の大きいコーナーもあるんです。地元野菜は多摩地域全体ならではの魅力なんじゃないかなと思います。

こだわりの南高梅で作る自家製梅シロップ。ベーグル・スコーンのほかにもドリンクやジャムも大人気。
—交通アクセスについて教えて下さい。
市内には西武線と多摩モノレールが通っていて、新宿駅にも約40分で行けるので、アクセスは良いと思います。モノレールに乗れば10分くらいで立川市に行けるので、週末には「ららぽーと」とか「IKEA」にもよく行きます。
—お子さんが生まれてからの生活はいかがでしたか?
今13歳の息子が小さかった頃は、まだ全国的に保育環境が整備されている段階で「認定こども園」がやっと出来始めたくらいの時期だったんですよ。でも、東大和市は「日本一子育てしやすいまち」を目指して子育て支援の施策がある程度揃っていました。専業主婦だった私は、子どもが生まれてすぐの頃にそのなかの1つでもある公民館の保育付サークルを利用していました。
—保育付サークルというのは?
公民館の保育施設に子どもを預けて、お母さんたちがリフレッシュする時間を作るというサークル活動です。日頃育児や家事で大変なお母さんたちのリフレッシュになりますし、子どもにとってもお友達を作れるきっかけになります。なにより、同じ世代の子どもを持つお母さん同士のネットワークをつくれたことがすごく良かったです。ママ友同士で子どもを預け合ったりとか、ご近所付き合いにも繋がり助けられました。
—お母さんたちにとっても子どもたちにとっても良いサービスなんですね。サークルではどんなことをしていたんですか?
1番最初に入っていたサークルでは、パッチワークや縫物をしていました。またこのサークル活動とは別に、公民館講座の中にお母さんを対象にした講座もあって、保育付きで2時間程度、外部の講師からさまざまな講義を受けられるっていうサービスを利用していました。講座では起業のことや、時間管理、自己分析などを学べるテーマもあって、そこでの経験も今に活きていると思います。
—その頃から起業や自分のお店を持ちたいという思いがあったんですか?
具体的には考えていませんでしたが、ものづくりが好きだったことや料理教室の講師をやっていたこともあって、何かできたらなとは考えていました。講座でできた友達とも、週に1度手作りでものづくりをするサークル活動をしていました。実際、そのうちの1人から「クリカちゃんものづくり好きだし、東大和市のママ・マルシェっていうイベントに出てみたら?」って声を掛けてもらって。

自作の「クリカ食堂」ロゴマーク。
このロゴにインスパイアされてロゴマークにちなんだ作品を作ってくれるクリエーター仲間もいるんだとか。
—「ママ・マルシェ」とはどういうイベントなんですか?
東大和市で行われたハンドメイドマーケットです。声を掛けてもらったときは自信がなくて悩んでいたんですけど、外の人に「美味しい」って言ってもらえるようなものを実際に販売するという目標を立てていたので、思い切って参加してみました。
—それが「クリカ食堂」の前身となったんですね。
マルシェでの出店をきっかけに、自宅での料理教室と、定期的に行うベーグルとスコーンの製造販売を並行して始めたんです。この2つの相乗効果もあって多くの人に認知してもらえるようになったんだと思います。サークルや講座で知り合った友人たちも手を貸してくれたり、そういう心強い仲間に出会えたことも料理で起業しようと思えたきっかけになりました。
—東大和市での暮らしや出会いがきっかけとなり、念願叶って自分のお店をオープンしたんですね。
今、お店で一緒に働く仲間の中にはサークル活動で知り合った友達もいます。マルシェでもいろんなクリエーターさんと出会えて、今でも親交がありますね。頼りになる仲間と出会えたことはすごく大きいと思います。


サークルで出会った仕事仲間。(左から 苅部さん、栗栖さん、仲程さん)
—お店の場所を東大和市に決めたのはどうしてですか?
自宅に近い東大和市にオープンさせたいとかつてから思っていたからです。それに、小平市のシェアキッチンで販売していたときは、小平市のお客さんが多かったので小平市から買いに来やすい場所にしたいとも思っていて。今の場所は東大和市駅から徒歩4分で、歩いてすぐに小平市にも行けます。その甲斐あって、昔からの常連さんもよく買いに来ていただいてます。



ベーグルやスコーンは通年メニューのほかに、季節や旬を取り入れた限定フレーバーも人気。
—人や町とのつながりを大切にされているんですね。
シェアキッチンをしていた時にコロナ禍になりまして、でも自粛期間が明けてシェアキッチンをオープンさせたら、普段日中、市内にいなかった方々が地元にいるようになっていて、お客様の顔ぶれが今までと変わったんですよ。あの頃はお店がほとんど閉まってしまい、みなさんも外食がなかなかできない状況だったじゃないですか。そういう気持ちがザワザワするなかで、“ちょっと甘いものでも買っていこう”とか、“家で作れないものを買って帰ろう”とかっていう人が増えたと思うんです。そういった方々がウチに買いに来てくれている様子も伺えたので、“これは地元でお店を出すいいタイミングかもしれない”とコロナがきっかけで思えたところはあります。
—コロナ禍で落ち込んでいた地元のみなさんにとって、栗栖さんのベーグルやスコーンの存在は大きかったと思います。
最近では、リモートワークのお客様がわざわざお昼休み中に買いに来てくれたこともあって。コロナがあったからこそ新しいお客様との出会いや町の人とのつながりが増えたのかもしれないですね。

「クリカ食堂」で開催した外部講師によるワークショップ。
ワークショップを楽しんだ後は、ベーグルやお菓子でティータイムも。
—開店して1年、これからの夢や目標は?
ベーグル作りは体力仕事なので、10年後・20年後はどうなっているかは正直わからないですが、「クリカ食堂」は続けていきたいですね。直近では、ワークショップを開催させていきたいと思っています。お店もワークショップとかができるような造りで建てたんです。少しずつですが、外部の講師の方を呼んだものづくりのワークショップを開いたりもしていまして。ワークショップなどを通して人と人とがつながったり活動できるようなコミュニケーションの場にしていきたいです。
豊かな自然を楽しみながら、ウォーキング・サイクリング
多摩地域での暮らしのなかで取り入れたいレジャーといえば、ウォーキングとサイクリング。四季折々に変化する自然の景観や、のどかな街並みを眺めながら進むコースが多摩地域の至る所に点在している。とくに東大和市や隣の小平市は、多摩湖や多摩川上水に沿ったコースが楽しめるおすすめスポット。市内には、森の雰囲気を味わえる雑木林のコースや多摩湖サイクリングロードなどのコースに加え、レンタサイクルや自転車専門店なども豊富に揃う。

「玉川・野火止コース」
東大和市駅から玉川上水駅に向かって、日野止用水と玉川上水を辿る約6kmの雑木林の中を進むコース。