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見出し:多摩の魅力発信
多摩の魅力発信SP

多摩で暮らす人 case03

変わっていく地元と変わらない思い かつての活気を鶴川に
加藤翔太さん、恵里子さん(町田市)

写真:加藤翔太さん、恵里子さん

加藤翔太さん、恵里子さん

東京・横浜のベッドタウンとして栄えた町田市は、大学や商業施設も多く、若者からファミリーまで多くの人が暮らしている。町には多摩丘陵の豊かな自然が残り、再開発が進む町田駅周辺は、都会的な利便性もあり多くの人で溢れている。とはいえ、「中心部を離れた場所では、かつての活気を失いつつある」という。「幼い頃に見た“賑わいのある地元”を取り戻したい」と語る、地元・鶴川で骨董店兼カフェを営む加藤さん夫婦に話を伺った。

プロフィール

〇加藤翔太さん、恵里子さん
町田市・鶴川セントラル商店街ができたころから祖父母が商店を営んでいたという店主の加藤翔太さんと奥様の恵里子さん。当時のお店をリニューアルした骨董喫茶「夜もすがら骨董店」を営む。お店では、翔太さんが骨董部、恵里子さんが喫茶部を担当している。

店舗情報

〇夜もすがら骨董店
町田市鶴川のセントラル商店街にある骨董店兼カフェ。昔懐かしい料理や飲み物とともに、店主こだわりのビンテージアイテムがディスプレイされたレトロな雰囲気が楽しめる。店内に並ぶ骨董品は購入も可能。フリーライブや出店が楽しめる「夜もす蚤の市」や、イベント企画などを積極的に開催し、地元・鶴川の魅力を発信している。
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料理は恵里子さんの担当。
看板メニューは一度食べたらやみつきの「焼きそばナポリタン」

—翔太さんは生まれも育ちも町田市。ずっと町田に住まわれているんですか?

翔太さん:高校時代の3年間は町田を離れて寮生活をしていましたが、卒業後は再び実家に戻りました。一人暮らしもしたんですけど、それも町田でしたね(笑)。子どもの頃から住んでいて慣れていたし、地元の友達もたくさんいたので町田を離れる理由がなかったんですよ。

—ずばり町田ってどんな町ですか?

翔太さん:よく聞かれるんですけど、町田に住んでいる人はよく「町田は町田」って答えるんですよ(笑)。これは投げやりとかじゃなくて、本当に町田は町田でしかないというか。ちょっと変わった町なのかもしれないです。

恵里子さん:たしかに私も町田に住んで10年以上は経つけど、説明が難しいよね。本当に町田は町田なんだなって思います。

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鶴川団地セントラル商店街。アーケードが真っすぐ伸びており、商店街の随所から昔懐かしい面影を感じられる。

—「町田は町田」なんとなく分かる気がします。さまざまな要素が混ざり合った魅力が町田市にはあると思います。

翔太さん:町田市に住んでる人は町田のことを好きな人が多くて、「ここで何かをしたい」とか「ここでなら何かできるかも」って思わされるんです。

恵里子さん:地元愛の強い人が多いですね。地元の友達も町田に残ってる人が多いよね?

翔太さん:外に出ても町田に戻ってくる人が多いね。僕もそうであったように(笑)。

—やっぱり皆さん町田が好きなんですね。

恵里子さん:私は町田市出身じゃないけど、町田はもう地元みたいな感覚です。みんな町田を良くしたいとか町田の魅力を発信したいとか、そういう人が多くて。ほかの地域からお店にいらっしゃるお客さんも、いつの間にか地元の人たちと同じように打ち解けていますね。

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翔太さんこだわりの骨董品たち。「夜もすがら骨董店」のロゴTシャツなどオリジナルグッズも販売中。

—骨董店とカフェを兼ね備えたお店ってめずらしいですよね。どうしてこのようなスタイルに?

翔太さん:2014年にこのお店の向いにある、僕の母がやっている着物屋の一角を間借りして骨董屋を始めたんです。そのときはまだ骨董だけを扱うお店で。お客様と話が弾んで盛り上がったりしていたんですけど、結局立ち話の域を出ないんですよ。お茶とかも出してゆっくり話せたらな、って思ったのがきっかけで骨董兼カフェのお店にしようと思ったんです。ちょうど今のこの場所が空いていて、厨房設備も充分に備わっていたし。骨董と喫茶が一緒に楽しめるお店ってあんまりなくておもしろいかなって。

—恵里子さんはいつから一緒に?

恵里子さん:ちょうど骨董店兼カフェになるタイミングで誘われて、そこからです。はじめはかなり渋ってました(笑)。鶴川自体は人通りがそんなに多くないし、商店街もほとんどおじいちゃんおばあちゃんばかりでしたし、商売的に大丈夫なのかって思いました。子どもも2人いますしね。でも、主人の熱量がすごくて(笑)。「これはやってみなきゃわからないな」ってなりまして、そのあとは勢いでしたね(笑)。

—鶴川にお店を開くということに何かこだわりや理由があったんですか?

翔太さん:僕が子どもの頃はこの商店街ももっと賑わっていて、ラーメン屋さんとかパン屋さんとかいろんなお店があって、クリーニング屋さんなんかは商店街内に3つもあったんですよ。今となっては、商店街自体の高齢化が進んでいまして、お店も減ってしまいました。今この商店街で唯一僕だけが3代目で、ほかは2代目の方々がやっていますから後継者の問題もあったりするんですよ。だんだんと廃れていってしまうのはなんだか寂しくて。駅からも離れていて、人も多くなくて、良い立地とは言えない場所なので商売を考えたときに不安はありましたけど、ちょっとでも鶴川の活性化に貢献できればなって思いが強くありました。

恵里子さん:最近になってそういう気持ちでやってきたことがようやく形になってきましたね。人が少しずつ集まってきて、遠方からわざわざ来てくれる常連さんもいたりして。コロナもあって店内営業ができなかったり、イベントが中止になったり大変なこともありましたけど、続けてきて良かったなと思っています。

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クリームソーダ。
定番のメロンから、変わり種のいちご、
レモンなども用意。

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音楽好きの加藤さん夫婦。店内の壁にはたくさんのギターが。

—お店でイベントもされているんですね。

翔太さん:最初は蚤の市として名前の通り商品の販売だけをしていたんですけど、もっとたくさんの方に楽しいと思ってもらえるようなイベントにしたくて、どうすればもっとおもしろくなるかを考えましたね。そこで、僕も妻も音楽が好きでお客さんにもミュージシャンが多かったので、第2回から物販に加えてフリーライブを取り入れてみたんです。これが好評で、今では物販や飲食の出店と合わせてライブがメインみたいになっていますね。お祭りみたいにすごく盛り上がります。

恵里子さん:この商店街にたくさんの人を呼びたいとか、もっと知ってもらいたいとか、盛り上げたいとか、そういう思いがすごく強くて。蚤の市もそこに繋がっていますね。不思議とそういう気持ちでやっていると、同じ気持ちの人が集まってきて。蚤の市も手伝ってくれたり、若い子たちが率先してボランティアでスタッフをやってくれたり、一緒に盛り上げてくれる人が増えてきたんです。

—夜もす蚤の市はたくさんの人の協力と商店街への想いが込められているんですね。

恵里子さん:夜もす蚤の市がきっかけでこの場所を好きになって、商店街にお店を出した方もいるんです。とにかく嬉しかったですね。私たちがやってきたことがこの商店街の再興につながったと思える瞬間でした。

翔太さん:町田市には僕ら以外にも町田を盛り上げようとする人とか、クリエイティブな活動をしている人が多いんですよ。町田市内のプロジェクトも多くて、そういう町おこしみたいなネットワークがあってたくさんの人とつながれたからこそ、僕らの活動も少しずつ注目されてきているのかなと思います。

—みなさん町田市の魅力を発信すべくさまざまなおもしろい取り組みをしているんですね。

翔太さん:お隣の相模原市の人と連携したり、「町田市100人カイギ」とかもあって、市内でおもしろいことをしている人同士の交流会みたいなものもあるんですよ。そこで新たなつながりが生まれたりもします。

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実際の「夜もす蚤の市」の様子。
蚤の市は年に2回程度企画しているそう。このイベントのために遠方から来るお客さんも多数。

—町田市全体としても昔と今では変わりましたか?

翔太さん:結構変わったなと思いますね。治安はすごく良くなったと思います。僕が10代の頃と比べるとすごく綺麗になったというか。でもそれと同時に、古き良き町田らしさっていうのがなくなってしまったのかなって思ったりもします。

—具体的にどんなところが?

翔太さん:人によって感じ方は違うと思うんですけど、”おもしろさ”って言うんですかね。もちろん今も充分魅力がありますけど、当時の町田はおもしろみに溢れていたんですよ。でも、変わっていくことは一長一短。少し寂しい気持ちもありますけど、実際暮らしは便利になっていますし、良いところもたくさんありますね。

—やはり町田市は暮らしやすいですか?

恵里子さん:不便は特に感じないですね。緑も多いし、ちゃんと暮らしやすい利便性もあって住み心地はとても良いです。町田駅の方に出れば、そこですべて完結できるくらいなんでも揃っていますし。

翔太さん:町田はベッドタウンなんで、特に何かがあるっていうわけじゃないんですけど、逆に何でもあるみたいな。

恵里子さん:商店街近くだと鶴川駅行のバスが10分に1本くらいで来ますし、町田駅直通のバスもあるからアクセスも便利だよね。

—地元をよく知る加藤さん夫婦のお気に入りの場所はありますか?

翔太さん:やっぱりこの商店街ですかね。商店街でお店をやられている方々も僕が子どもの頃からの知り合いですし、思い入れが強いですね。普段の買い物もなるべくここの八百屋さんで買って地域還元できるようにしています。あとは、この辺のラーメン屋さんはよく行きますね。町田全体で美味しいラーメン屋さんがいっぱいあるんですよ。鶴川だけでも3店舗くらいローテーションで行っています。

恵里子さん:私はこの商店街の裏が好きです。町田らしい雰囲気が残っていて、下町情緒があるんですよ。とくに何かがあるっていうわけじゃないんですけど、散歩したりぼーっとしたりして過ごしてます(笑)。

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お店の内装にはこだわり、半年以上の時間をかけてようやく完成したんだとか。
「今となっては時間をかけてこだわって良かったと思います。」

—今後の夢や目標は?

翔太さん:この商店街をもっともっとおもしろくして、盛り上げていきたいですね。僕が思う町田らしさもうまく生かしながら、幼少の頃に見たあの活気ある商店街を取り戻していきたいです。

恵里子さん:やっぱりおもしろいところに人は集まりますから、だからこそもっとおもしろい商店街に、おもしろい町にしていきたいです。

—最後に改めて伺います、町田ってどんな町ですか?

翔太さん:町田は町田です。

恵里子さん:そうですね…。町田はいいまちだ、ですかね(笑)。

町田のおもしろい人大集合。
「町田市100人カイギ」って?

「マチで活動する100人がプレゼンする」をコンセプトに東京都港区から始まった「100人カイギ」。近くで働く人がどんなことをしているのかを気軽に話しながら、参加者同士のコミュニティを築き、自分たちの町をもっと盛り上げていくコミュニケーションの場として全国50地域以上で開催されている。2021年8月からは、町田市でもスタート。町田市で暮らす・働く・面白いことをしている人を毎月5人ずつ呼び、町田市での活動を紹介して、新たなつながりやおもしろいプロジェクトのきっかけを創造している。

画像:町田市100人カイギ